大岡忠相 (Japanese Wikipedia)

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  • 吉澤孔三郎 編「国立国会図書館デジタルコレクション 第五話 息子爭ひ」『世界童話大系.第10巻(印度篇)』世界童話大系刊行会、1925年10月https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/978860/171 国立国会図書館デジタルコレクション 『第五話 息子爭ひ 一人の女が男の子をつれて、溜池のそばに行きました。そしてまづ男の子に水浴をさせたあとで、自分が水につかつてゐますと。一人の女鬼が通りかかりました。女鬼は、池のはたで遊んでゐる男の子を見ると、それを食べて見たくてたまらなくなりました。で、優しい言葉で暫らく男の子をあやしてゐましたが、やがてその子をとつて、とつとつと驅けだしました。母親は大さう驚いて、そのあとを追つかけました。そして追つつくが早いか、「わたしの子供を盜んで、どこへつれて行くんです。」と詰りました。すると女鬼はすまし返つて、「子供を盜んだとは誰のことです。これはわたしの子供ですよ。」と云ひました。かうして二人が云ひ爭つてゐますうちに、段々と人だかりがして、たうとうマホサダーの目につきました。マホサダーは二人の女から話を聞くと、地面に一本の線をひいて、「さあ、この上に子供を立たせるがいい。そして一人は兩手を、一人は兩足を摑んで、引つぱりくらをしなさい。それに勝つたものが、本當の母親です。」と云ひました。そこで二人の女は、地面に條を引いて、その上に子供をおくなり、一人は兩手を、一人は兩脚を摑んで、一生けんめいに引つぱりました。男の子は痛くてたまりませんので、大きな聲で泣き出しました。その聲を聞くと、母親は可哀さうになつて、覺えず摑んでゐる手を放しました。
    マホサダーはこれを見ると、人々に對つて、「子供に優しいのは、母親の心だらうか。それとも他人の心だらうか。」と尋ねました。「それは云ふまでもなく、母親の心ですよ。」と、人々が答へました。「それでは、子供をはなしたのが母親だらうか。放さなかつたのが母親だらうか。」とマホサダーが尋ねました。「勿論子供を放したのが母親ですよ。」と、人々が答へました。するとマホサダーは、「その通りぢや。」と云つて、女鬼を指しながら、「この女は、瞬きをしない、眞赤な目をしてゐるし、それは日が照つても、影が地面にうつらない。だから鬼だといふことがすぐわかる。」と云ひました。女鬼は恐れ入つて、子供を盜んだことを白狀してしまひました。王さまはそれをお聞きになつて、マホサダーに會ひたいとお考へになりました。しかし大臣はやはりいろんなことを云つて、それをお止めしました。』

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